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奏芽さんには内緒にしていたけれど、私、実は昨夜のうちに四季ちゃんに、「明日はひとりで大学に行きたいと思ってるの」って連絡を入れていた。
当然のように四季ちゃんからも今朝の奏芽さん同様散々心配されたのだけれど、「いつまでもひとりで出歩けないのは困るし、頑張ってみたい」と真剣に胸のうちを説明して、何とか引き下がってもらった。
もちろん、あの事件以来初めて外をひとりで歩くことになるわけだし、何も不安がなかったかというとそんなことはない。
奏芽さんや四季ちゃんに大丈夫だと大口を叩いた手前、頑張らなきゃって気負いがあって、そのおかげで私、逃げ出さずに踏ん張れたと思う。
大学が近くなって、若い男女に出会う割合がぐんと高くなって。
前に見知らぬ男性とすれ違った途端、監禁された記憶がフラッシュバックして、座り込んで動けなくなってしまった辺りまで差し掛かった時には、さすがに心臓がバクバクして息が苦しくなった。
このままではまた前回の二の舞になってしまうと思った私は、奏芽さんにもらったお守りや、スマホのGPSのことを思い出して、深呼吸をした。
それでようやく少しずつ気持ちが落ち着いてきて。
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