1549人が本棚に入れています
本棚に追加
奏芽さんと一緒に住んでいるマンションから大学までは約1キロ。徒歩で大体15分ちょっとの距離。
ほとんどのルートが人通りや車通りの多い賑やかな場所を通ってくる比較的安全な道。
とはいえ、あの一件以来見知らぬ男性に必要以上に恐怖を覚えるようになってしまった私には、その賑やかさが却って仇になって。
特に金里明真と同年代くらいの若い男性に過剰反応してしまう。
大学近辺になると、若い異性との遭遇率がグッと上がるから。
ラスト5分くらいは本当にしんどかった。
***
「鳥飼さんにはもう連絡した?」
無事に着いたことをちゃんと知らせておかないと、きっと今頃ヤキモキしてるよ?って四季ちゃんに手を握られて、私はハッとする。
「ま、まだっ。ごめん、四季ちゃん。ちょっとメールして……いい?」
人と一緒にいるのに鳴ってもいないスマホを取り出して操作することは失礼な気がして。
申し訳なく思いながらそう問いかけたら、四季ちゃんは「もちろんだよ」ってにっこり笑ってくれた。
私は四季ちゃんにお礼を言うと、「無事大学につきました。私、ひとりでもちゃんと外、歩けました!」と、笑顔でガッツポーズをするうさぎのスタンプと一緒に、そんな文言をメッセージアプリで奏芽さんに送る。
最初のコメントを投稿しよう!