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鳥飼さんに振り回されすぎて、のぶちゃんのことを考える暇もなかったというのが正解かも知れない。
だってアイツ、毎日のように私をからかいに来るんだもん。
考えてみたら、あの人のせいでこんな風に地元を懐かしむ暇もなかった気がする。
でも、それ自体おかしいのよ。何あんなのに振り回されてたの、私!
他に気を取られていたら、大好きな幼なじみのことも考えられなくなっちゃうものなのかな。
今までこんなにのぶちゃんのことを思い出さなかったの、凄く不思議だ。
私、彼を追ってこんな遠くの大学を目指したっていうのに。
のぶちゃんは私のことを妹くらいにしか思ってないはずで……なのに私はそれ以上の感情を抱いていて。
少なからずそんな風に相手に対して好意を持っていたのは私。
その私ですらこんななんだから……日々仕事に忙殺されているであろうのぶちゃんからの連絡を待っていたんじゃ、あっという間に1、2年過ぎてしまう気がする。
そ、それはさすがに寂しいっ。
そう思った私は、スマホを取り出して住所録から「本間信昭」を呼び出してみた。「のぶちゃん」と登録するのは、なんだか子供じみている気がして躊躇われて、フルネームで登録してみた初恋の人の名前は、それだけでどこかよそよそしく感じられた。
今はのぶちゃんよりも毎日のようにちょっかいをかけてくる“あの男”のほうがずっと身近に感じられて、ついほだされそうになってしまっていたけど。
認識を改め直さなきゃ。
誰かの身代わりで可愛がられるのなんて真っ平ごめんだわ。
同じ年上から「よしよし」されるなら、私のことを私本人として見てくれるのぶちゃんの方がいい。
例え妹のようにしか思ってくれていなくても、その方がマシ。
そこまで考えて、ハッとする。
「マシ」って……なに?
もう一度空を見上げて、私は大きく溜め息をついた。
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