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「鳥飼凜子さん、どうぞ」
そう名前を呼ばれて立ち上がった際、下腹部からの違和感に立ち止まった私に、私とお腹の我が子のことを心配して「無理はするな」って奏芽さんが言ってくださって。
そんな奏芽さんに、「はい」って答えながら、
「また少し温かいのが漏れた気がして怖くて」
恥ずかしさにうつむきながらも、小声で正直にそう言ったら、「待ってろ」って言われてしまった。
一応出がけに下着に新しい生理用品は当てて来たけれど、身体を動かすたびに下腹部からじんわりと温かなものがほんの少しだけ伝い出る感触は、やはり何だか怖い。
壁に縋るようにして極力動かないように立っていたら、奏芽さんが奥からナース服に身を包んだ女性を連れて戻っていらした。
「歩くと漏れ出ちゃう感じで怖いですか?」
その女性が私に視線を合わせるようにして問いかけてきて、私はコクン、とうなずく。
胸に「K.Mikimoto」と刺繍の入ったナース服を着た、ゆるふわセミロングをひとつに束ねた彼女を、私は知っている。
彼女は奏芽さんの先輩、ここの産婦人科の若先生の奥さんだ。
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