Epilogue

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***  テキパキと奥の方から車椅子を持って再び現れた彼女に「(あふ)れてきてるの、一応診察してみないとハッキリとは言えないですけど。お話を聞く限りだと〝高位破水〟かな?って思います」と言われて、私はやっぱりそうなんだって思って。  高位破水は普通の破水みたいにバシャッと一気に羊水が流れ出ないから気付きにくいと言われていたけれど、私は幸い尿漏れなどもなく妊娠後期まできたから。  夕方あたりから動くたびに下着がほんの少し濡れることに不安を覚えて、お仕事を終えて帰宅なさった奏芽(かなめ)さんに頼ったの。  奏芽さん、お医者様だからかな。多くは言わなくてもピンときたみたいで、すぐに病院(ここ)に連絡して連れてきてくださった。  お仕事を終えたばかりで疲れていらっしゃるだろうに、そんな素振りは微塵も見せない奏芽さんが本当に頼もしくて。  赤ちゃんのところまでバイ菌とか入っていたらどうしよう?と不安になって思わず眉根を寄せたら、奏芽さんに「大丈夫だ」って頭を撫でられた。 「ご主人のおっしゃる通りですよ? 多分このまま入院、出産になっちゃうんで、今のうちにひょいひょいっとつまめる食べ物とか飲み物とかご主人に準備してもらっときましょう。お腹が空いたら出産(いくさ)は出来ませんからね」  そこでふと思い出したように 「私の一押しのスタミナ食は(うなぎ)なんですけど、さすがに陣痛中は食べるのは厳しいと思うんで……一口サイズに握ったシンプルな混ぜ込みご飯のおにぎりとかがいいと思います」
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