Epilogue

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 そこまで言って、ハッとした様に私のすぐ横に立つ奏芽(かなめ)さんに、「鳥飼(とりかい)さん、おにぎりにぎれます?」と詰め寄って。  溜め息まじりに「うちの主人は全然ダメな人でお手伝いさんにご迷惑をお掛けしましたぁー」とこぼしてから、「あっ」とつぶやいて口を閉ざした。  その様子にキョトンとしたら、背後から若先生――ご主人が歩いていらしたから、らしい。 「鳥飼(とりかい)、こんな時間に奥方とここへ来てるって事は……いよいよかね?」  って奏芽さんに聞いてから、奏芽さんの返事を待たずに私に「心配しなくて大丈夫だからね。うちのスタッフはみんな優秀だから」ってニコッと笑いかけてくださる。  奏芽さんがそんな先輩医師に向かって「御神本(みきもと)先輩、今日の当直って」とやけにピリピリなさって。 「ん? あー、残念ながらじゃないよ? 奥さんの主治医の杉本先生が診てくれるはずだからそう警戒するな」  ってクスッと笑うの。  私は2人のやり取りに、寸の()現状も忘れてドキドキしてしまった。 「――ところで花々里(かがり)のどこがダメだったのか、後でゆっくり話そうね?」  すれ違い様、ご主人にそうささやかれて、私の背後で車椅子を押してくださっていた御神本(みきもと)先生の奥様が「ひっ」って小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。
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