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「凜子、ただいま」
仕事から帰ってきた奏芽さんが、私の耳に触れるか触れないかの距離で〝今日も私のもとへ無事に帰ってきてくれたのだ〟と実感させてくれる。
そのたびに、私は凄く凄く幸せな気持ちになれるの。
「奏芽さん、お帰りなさい」
そんな奏芽さんにギュッとしがみつきたくて私が気持ち背伸びをすると、奏芽さんは必ず身体をかがめるようにして、自分に触れやすいようにしてくれる。
奏芽さんが動くたび、ふんわり香る柑橘系の嗅ぎ慣れた香りが、彼のそばにいるのだと実感させてくれるのが大好き。
「拓斗、ママと一緒にいい子にしてたか?」
ややしてベビーベッドで眠る息子に視線を転じた奏芽さんが、私を抱き寄せたままベッドサイドに立つの。
2人きりの時のようにお互いのことばかりを気にしてはいられないけれど、家で待つ妻子のことを心の底から慈しんでくれる奏芽さんが切ないくらい愛しいです。
今まで通りの「凜子」と言う呼び名と同じくらい、奏芽さんから呼びかけられる「ママ」と言う言葉は私を幸せにしてくれる。
私も、奏芽さんのことを「パパ」って呼ぶたび、心地よいくすぐったさに胸の奥がキュン、と温かくなるの。
私たち、家族なんだなぁって実感できて嬉しくて嬉しくて。
奏芽さん、大好きなあなたを「いってらっしゃい」と送り出す時、私はいつも凄く寂しいです。
でも、あなたは毎日ちゃんと「ただいま」って帰ってきてくれるから……。
だから私、そのたびに最上級の笑顔で「おかえりなさい」って言います。
これから先、何年も、何十年も……ずっとずっと。
END(2021/03/02)
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