スタ特①『お医者さんごっこ』

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「ひゃっ!」  私は鳥飼(とりかい)小児科医院の第2診察室に置かれた簡易ベッド(診察台)に足を取られてストンと座り込んで――というより寝そべってしまった。 「凜子(りんこ)、俺、そっちの椅子での診察でも良かったのに……。え、何? 仰臥位(ぎょうがい)での診察希望だったの? いやん、エッチ!」  クスクス笑われて、ブワッと顔が熱くなった。 「じっ、事故ですから!」  それに私、お医者さんごっこに乗るなんて一言も言ってない。 「じゃあ、凜子さん、そこに起き上がったんで構わないので、上半身全部脱いでくださぁーい」  すぐそばのドクター用の椅子にかけられていた聴診器を手に取ると、奏芽(かなめ)さんが近づいてくる。  私は慌てながら「内科の聴診で上半身裸になんてなりませんから!」って、彼をキッと睨みつけた。  最近は着衣のまま、先生がなるべく患者さんの肌を露出させないように配慮なさいながら聴診器を器用に服の中に入れて当ててくださるの、知らないの!?  男性の診察はどうか知らないけれど、少なくとも私がお世話になっている内科だとそうよ?  奏芽(かなめ)さんを睨みつけながら、畳み掛けるように抗議したら、 「でもさ、ここは小児科だからな? 子供らはみんな、そこの仕切りん中で上の服全部脱いで半裸になってから俺の方(こっち)に来るんだわ」  言われてふと見ると、カーテンで囲まれた一角、椅子と脱衣籠が置かれていて――。  確かに小さな子たちはそうなのかもしれない。  しれないけれど! 「前の子診察してる間に次の子、そこで脱いで待ってんの。すげぇ効率的だろ?」  とか。
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