1544人が本棚に入れています
本棚に追加
/615ページ
大学まで凜子を迎えに行った車中。
彼女のバイトの時間までまだ少し時間があるしってことで、うちの小児科が契約している月極駐車場の一角に車を停めて、凜子とほんの少しお喋りタイム。
お互い忙しい俺たちにとって、日々の中に時折挟み込まれるこういう隙間みたいな時間は結構大事で。
いつもならその日にあった、他愛のない報告なんかをし合って盛り上がるひと時なんだけど、今日は少し様子が違っていた。
***
「あのね、奏芽さん、四季ちゃんが……男の人は定期的に……その……だ、出さないと大変なことになるって言うんですけど……」
どうやら俺がド派手に大学の正門前に凜子を迎えに行ったことがきっかけになって、ようやく彼女にも幾人かの気のおけない友達ができたらしい。
その火付け役になったのが、いま凜子の口から名前の上がった「片山四季」と言う娘らしく――。
何人か名前が上がる友人たちのなかで、ダントツで登場回数が多いことから鑑みるに、1番仲がいいのがその子なんだと思う。
片山さんとは、俺も凜子に会いに大学へ行った時に1度だけ会ったことがある。
前下がりのショートマッシュを、ココアベージュに染めた彼女は、黒のノースリーブに白のワイドパンツといったシンプルな装いを大人顔負けの色香で着こなしていた。
一見大人しめで真面目女子な凜子とは接点のなさそうなタイプに見えたが、凜子が言うには彼女は俺とどこか似ているらしい。
最初のコメントを投稿しよう!