1544人が本棚に入れています
本棚に追加
/615ページ
ハンドルにもたれかかるようにしていた身体の向きを変えて、凜子の方を向くと、彼女の手をギュッと握って顔を見つめる。
「……っ、」
途端、真っ赤な顔をして身体を目一杯窓の方へ倒すと、それでも凜子は俺の問いかけに小さくうなずいた。
「まぁ、出さねぇと確かにヤバイかな〜」
言ったら、「ば、爆発しちゃうって聞いたんですけど!」とか。
ちょっ、片山さん、凜子のこと、からかいすぎだろ。
「奏芽さん、そのっ、だっ、だっ、だ……」
「だ?」
「……出、さ……なく、て……大丈夫なんですかっ?」
泣きそうな顔をして俺を見つめてくる凜子が可愛くて、俺は思わず笑いそうになる。けど、真剣な凜子に対してそれはダメだ。
おい。何の罰ゲームだよ、これ。
俺、自分で処理するから大丈夫だよ、とかリアルに説明していいわけ?
それともメルヘンチックに誤魔化すべきなの?
俺を見つめる凜子の目からポロリと涙が落ちて、俺はほとほと困り果てる。
「あんな、凜子――」
さて、どう返すべきか。
ただひとつ絶対だと言い切れることがあるとすれば……それでも俺はこの初心で、純粋で、馬鹿がつくくらい真面目な彼女が。
名実ともに二十歳を越えるまでは、何があっても絶対に手出しはしないってこと。
え? 爆発するかもしれないって?
上等なんじゃね?
今まで俺が遊びまくってきたのは、もしかしたら今の状況に耐える力を身につけるためだったんじゃないかと、そんな風にさえ思うんだ。
なぁ凜子。
俺は大丈夫だって。
だから、な? とりあえず泣きやめよ。
END(2020/07/28)
最初のコメントを投稿しよう!