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半分こ
車を商店街付近のコインパーキングに駐車して、たくさんのお店が立ち並ぶ町並みを2人でのんびり歩こうってことになった。
車を降りた途端、アスファルトからの照り返しの熱気と、どこからともなく聞こえてくるセミたちの大合唱にひるみそうになる。
私のすぐ横に立った奏芽さんに、当然のように手を差し出されて、でも……手を繋いだら手汗とかで不快にさせてしまうかもしれないと、それが気になってなかなか手を伸ばせない。
こら、凜子! 何のために今日はリュックにしたの?
奏芽さんと手を繋ぎたかったからじゃないの?
そう自分を鼓舞してそっと手を伸ばしたら、ギュッと握られて。
さっきみたいにシンプルに繋ぐだけかと思ったら、指と指を絡めるように組み直された。
こっ、これは……いわゆる恋人繋ぎ!?
そう思っただけで奏芽さんと私、お付き合いしてるんだ、って実感がにわかに湧いてきて心臓が早鐘を打ち始める。
「あ、あの……か、なめさんっ」
その状態のまま、でもでも私は言わずにはいられない。
「わ、私っ。今、その、すっ、すごく緊張してて……。だから手っ。……手に汗とか……た、たくさんかいちゃうかも知れないんですっ。だから……」
せめて手と手の間にこのハンカチを……。
オロオロしながら奏芽さんを見上げてポケットからハンカチを取り出したら、奏芽さんが瞳を見開くの。
次いですぐにそっぽを向いて肩を震わせ始めて。
最初は何だか分からなかったけど、どうやら奏芽さん、笑いを堪えるのに必死みたい?
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