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「俺が今、なに考えてるか当ててみ?」
言われて、素直になりきれない私は、「む、無理です……っ」って言葉と一緒に、あごにかけられた手から逃れようと頑張った。
と、不意に耳元に寄せられた奏芽さんの唇が、「凜子に甘いもん食わして、思い切り甘やかしてぇなって思ってる」って低い声でささやいて。
「そういう甘さも悪くねぇだろ?」
とか!
私は奏芽さんのその言葉に、全身がゾクッとなって、身体を跳ねさせた。
「そんなわけで、さっさと行くぞ」
グイッと奏芽さんに繋いだ手を引っ張られて、私はまろび出るように歩き出した。
***
いざクレープ屋さんに入ってみると、そのメニューの豊富さに愕然となる。
クリームの種類や具材の組み合わせが、ざっと見ただけで30種類以上!
何これ何これ何これーっ!
あれもこれもみんな美味しそうで、1つになんてとても絞れそうにない。
ショーケースに飾られた食品サンプルのクレープは、どれもキラキラつやつやと輝いて美味しそうで。
定番のチョコバナナも捨てがたいけれど、バニラアイスに抹茶ソースが掛けられたのも美味しそう。
クリームチーズにブルーベリーやラズベリーの組み合わせも捨てがたいし、あーん、迷っちゃう!
次に来たときにまた、というのも選択肢の1つだと分かってはいるけれど、私、ここまで奏芽さんの車に乗せてもらって来た。
要するに自力で来ようと思ったら、バスに乗ることが必須条件。
バス代にクレープ代に……って考えたら、貧乏学生の私には、そうおいそれとは来られそうにないの。
「凜子、眉間にしわ寄ってるぞ?」
不意に奏芽さんが私の額に触れてきて、私はビクッとなって現実に引き戻される。
わーん。選ぶのに夢中になりすぎて、奏芽さんと一緒だってこと、忘れてたっ!
「ご、ごめんなさいっ」
恥ずかしさに真っ赤になったら、「絞れそう?」って聞かれて。
「決めた?」でも「選んだ?」でもなく、「絞れそう?」って聞かれたことに、色々見抜かれているのだと感じて羞恥心が募る。
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