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「チョ……」
チョコの、と言おうとして、あー、でも抹茶のもっ!と後ろ髪を引かれてしまう……。
ぎゅっと目をつぶって視界から抹茶を追い出すと、「チョコとバナナのにしますっ」と自分に言い聞かせるように言ったの。
「奏芽さんは決まりましたか?」
聞けば、奏芽さんは私の頭をポンポンと優しく撫でてくれてから、「座って待ってて?」と店内を見回した。
テラス席しか空いていないように見えるけど注文待ちの間に空く……かな?
そのまま注文カウンターに向かう奏芽さんに「あ、お金……」って声を掛けたら「奢らせてくんねぇの?」って言われてしまった。
奢らせろ、って言われたら「ダメですっ!」って言えたのに、まるで頼み事をするみたいなそんな言い方! 私、断れなくて困ってしまう。
「あ、でも……」
それでも渋る素振りを見せる私に、
「じゃあ、凜子の選んだやつ、俺にも味見させて? 1番クリームたっぷりなトコ」
とか。
奏芽さんっ。
どのみち奏芽さんが買ったものなら、全部食べられたって私、文句なんて言えないのに。
思いながら恨めしげに見つめたら「ダメ?」って眉根を寄せるの。
いつも自信家でどこか傲慢にさえ見える奏芽さんが、子犬みたいな表情をするの。ずるくない?
私、とうとう根負けして小さくうなずいてしまった。
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