スタ特④『ごめん、許して?』

4/6

1544人が本棚に入れています
本棚に追加
/615ページ
奏芽(かなめ)さん、今……嫌いって……言っ……」  ややして、凜子(りんこ)がうつむいて俺の言葉を復唱して。  よせばいいのに俺は「ああ、嫌いだって言った」とか、余計なことを言って彼女に追い討ちを掛けてしまう。  途端、凜子が俺の顔をキッ!も睨みつけてきて――。  こちらに視線を向けてきた瞬間、キラリと光るものが舞い飛んだように見えたのは……気のせいだろうか?  いや、けど……今のって……。やっぱ……涙?  そう思い至って確認しようとしたら――。 「私も今日の奏芽(かなめ)さん、大っ嫌いです!」  凜子がそう叫んで走り去ってしまう。 「あ、オイっ!」  呼びかけて手を伸ばしたけれど、タッチの差で届かなかった。  バン!と言う重苦しい音を立てて防音室の扉が閉ざされる。  なぁ、凜子。何でよりによって防音室(そこ)なんだよ……。  こういう時、理想は扉越しに謝って、少しずつ距離を詰めることなんだけど。  さすがに(こも)られたのが防音室じゃ、そういうわけにもいかなくて。  俺は力なく溜め息をひとつ。  所在なくソファ横に立ちっぱなしだった身体に気合いを入れて、天の岩戸ならぬ、防音室の防音ドア(厚い扉)の前に立った。
/615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1544人が本棚に入れています
本棚に追加