スタ特④『ごめん、許して?』

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 不機嫌さをあらわにした凜子(りんこ)の顔に見惚れたとか言ったら、ますます怒らせるだろうか。 「ホント反省してるから。ごめん。お願いだから許して?」  そっと肩を抱くようにして体温を凜子に分け与えながら、耳元に唇を寄せてささやけば、彼女の肩がピクッと跳ねたのが分かった。  そのままクルリと向きを変えると、俺にギュッと抱きついてきて「好きって言ってくれたら許します」と小さくつぶやく。  うわ。  何だ、今日の凜子、可愛いすぎるだろっ。  俺はあと2ヶ月もこんなとんでもなく可愛くて魅力的な生き物を相手に、禁欲を貫かなきゃいけないのか?  自分で決めたことなのに、段々自信がなくなってきた。 「嫌いとか言ってごめん。あんなん嘘に決まってる。俺、凜子のこと異性としてすっげぇ好きだし意識してっから。――だから……早く二十歳(はたち)になって?」  今だって、抱かない宣言が簡単に揺らぎそうで怖くて、この場からすぐさま立ち去ってしまいたくなるぐらいに凜子のこと、――いやらしい意味で抱きしめたくて堪らんねぇんだけど?  言っても信じてもらえねぇかもしんないけどさ。 「――けど……凜子だって……」  潤んだ()で俺を見上げてくる凜子の薄く開いた唇に舌を滑り込ませたい衝動を押さえつけるように、俺は視線をふいっと逸らして拗ねたように付け加える。 「さっき俺のこと大っ嫌いって言ったの、取り消してくんね? 結構ショックだったんだけど?」     END(2020/10/06〜10/7)
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