スタ特⑤『俺はあの時からずっと』

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***  俺も店主の雨宮(あまみや)も、俺を呼び出した幼なじみの温和(はるまさ)も、高校時代の同級生だ。  特に温和(はるまさ)と俺は……高校時代に限らずそれこそ赤ん坊の頃からの腐れ縁。  血の繋がりこそないけれど、誕生日が一緒の、いわゆる双子のような存在だ。  ハルが独身の頃はよく2人でつるんだんだけど。  くだんの悪友が、俺の妹――音芽(おとめ)と恋仲になってからは、ハルの毎日はもっぱら彼女を中心に回り始めて。  和音(こども)が生まれてからも、全然それが崩れないからすげぇな、と思っている。  そんな感じで、ハルから呼び出しがあるのは、こんなふうに音芽が居ないときに限られているというのは何だかなあという気がしなくもない。  けど、考えてみたら俺も正直最近凜子(りんこ)中心になりつつあるし、ハルのことを言えた義理じゃねぇかなと思う。  実際週に1回は通っていた「あまみや(ここ)」にも、凜子と付き合うようになってからは少し縁遠くなっている。  凜子がいつも外食が多めな俺を心配して手料理を振舞ってくれるからだったりするんだけど、雨宮にはそれがどう映っているだろう、とふと不安になった。  とはいえ先月も凜子を連れて食いに来てるし、まぁハルよりは常連なはずだ。  ひさしぶり、と言いながらハルとふたり、カウンター席に着いたと同時。  雨宮(あまみや)が、「なんだ、鳥飼(とりかい)。今日は凜子(かのじょ)さんと一緒じゃねぇのか?」とか余計なことを言ってきた。  それ、温和(はるまさ)だってそうだろ?  俺と、より絶対音芽(おとめ)を連れて来店してる割合の方が高いよな?  何で俺だけ指摘するかね?  思って雨宮を睨みつけたら、フッと笑みを漏らされた。  あー、これ、絶対わざとだ。
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