スタ特⑤『俺はあの時からずっと』

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「――俺にとっての音芽(おとめ)みたいなもんか?」  ややして言葉に詰まった俺を助けるみたいに温和(はるまさ)がそうつぶやいて。  絶対とは言えないけれど、多分それが一番しっくりくる説明なんだろう、と思った。 「そうかもな」  うなずいたら、今まで無言で俺たちのやり取りを聞いていた雨宮(あまみや)が、「少しだけどな、音芽ちゃんに似てんだよ、雰囲気が」とまたしても言わなくていいことを付け加えてくる。  そんなことハルに言ったら話がややこしくなんだろ、バカ。 「音芽と?」  途端ハルが目を(すが)めてきて、俺は溜め息を落とす。 「最初は、な。音芽(いもうと)見てるみたいで放っておけなかったんだよ。――けど」  そこまで言って、俺は温和(はるまさ)と雨宮を交互に見やって、「今は凜子(りんこ)は凜子だと思ってる」とつぶやいた。  凜子(りんこ)音芽(おとめ)と似てると言われるのは何となく嫌だし、それはきっとハルも同じだろう。  凜子自身も、そう見られることを望んでいないことを、俺は知っている。 「第一……」  そこまで言ってハルに視線を流すと、「いくら可愛くても俺、音芽にキスしたいとは思わねぇわ」とニヤリとする。 「バカか。したいと思われても俺がさせねぇよ」  途端ムッとしたようにハルが応戦するのが面白くて、思わず笑ってしまった。 「だからしねぇよ、音芽には」  音芽(アレ)はどう転んだって俺にとっては妹以外の何者でもない。  凜子とは違う。
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