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「――俺にとっての音芽みたいなもんか?」
ややして言葉に詰まった俺を助けるみたいに温和がそうつぶやいて。
絶対とは言えないけれど、多分それが一番しっくりくる説明なんだろう、と思った。
「そうかもな」
うなずいたら、今まで無言で俺たちのやり取りを聞いていた雨宮が、「少しだけどな、音芽ちゃんに似てんだよ、雰囲気が」とまたしても言わなくていいことを付け加えてくる。
そんなことハルに言ったら話がややこしくなんだろ、バカ。
「音芽と?」
途端ハルが目を眇めてきて、俺は溜め息を落とす。
「最初は、な。音芽見てるみたいで放っておけなかったんだよ。――けど」
そこまで言って、俺は温和と雨宮を交互に見やって、「今は凜子は凜子だと思ってる」とつぶやいた。
凜子を音芽と似てると言われるのは何となく嫌だし、それはきっとハルも同じだろう。
凜子自身も、そう見られることを望んでいないことを、俺は知っている。
「第一……」
そこまで言ってハルに視線を流すと、「いくら可愛くても俺、音芽にキスしたいとは思わねぇわ」とニヤリとする。
「バカか。したいと思われても俺がさせねぇよ」
途端ムッとしたようにハルが応戦するのが面白くて、思わず笑ってしまった。
「だからしねぇよ、音芽には」
音芽はどう転んだって俺にとっては妹以外の何者でもない。
凜子とは違う。
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