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「音芽のこと、想像せずに聞けよ?」
何故わざわざそんな要らん前置きをするかね、温和くん。
逆に考えちまうだろ。
敢えて目の前の筑前煮に箸を伸ばすと、味のよく沁み込んだ椎茸を口に放り込んで、気持ちを切り替えた。
「しねぇよ」
飲み込んでからそう返してみたものの、ハルの頭の中は俺の妹である音芽のことで一杯なのだと思い至った。
仲がよろしいことで。
思いながらも、そういえばこいつらの〝初めて〟なんて8年以上前だよなと思って、覚えてんのか?とふと不安になる。
いや、別に初めてのときじゃなくてもいいんだけどさ、女のほうがこなれてくるとあれだろ。
そういうの余り気にしなくなんだろ、多分。
俺の今までの経験からしてもそういうのをやたら恥らうのは初めて肌を合わせるとき限定な気がして。
まぁ俺の凜子は違うけどな。
妹はどうだろう?
ふとそこまで考えて、音芽のことを想像するなとハルに釘を刺されたのを思い出して苦笑する。
ヤベー。
考えたくねぇこと考えそうになったわ。
あのちっこかったのが、男とそう言うことしてるとか……やっぱお兄ちゃんとしてはあんま想像出来ねぇししたくねぇんだよ。
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