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「あのさ……出来れば結婚前のこと思い出して答えてくんね? ほら、お前と馴れ合いになる前の……」
茶をすすりながら付け加えてみた。
お前と馴れ合いになる前の音芽の、とは何となく抵抗があって言えなかった。
兄である俺がそれを言うのは何だかなぁと思っちまって。
音芽だって、俺にそんなこと思われたとか知ったらすげぇ嫌だろうし。
ハルよ。お前が前置きした妹のこと想像すんな、は案外的を射てたかも知んねぇな。
まぁお前の場合はただ単に独占欲からの言葉だったと思うけどさ。
***
「そうだなぁ。俺は風呂場へ着てった服、ガッツリ着直して出てきてくれるのが好きかなぁ。――ほら、例えば、だけどさ……」
そこで、温和が何やら思い浮かべているような顔をする。
先程の俺みたいにカレイの煮付けに箸を伸ばして。だが結局口には運ばずに手を止めて言う。
「風呂に入る前に1枚1枚ぜーんぶ俺が脱がしたってんなら……まぁ風呂上りは全裸を捕獲するんでも全然構わねぇんだよ」
そこまでで、温和が何を言わんとしているのか大体分かってしまった俺は、きっとこの幼なじみと同じ穴の狢だな。
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