■ひとりで気負い過ぎんなよ(オマケ的短編)

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「日中俺が仕事に行ってる間、凜子(りんこ)はずっと拓斗(タクト)の面倒見てくれてんだろ? その分、俺も家にいる時くらいは父親らしいことしてぇし、風呂も俺が入れるんで問題ねぇだろ」  何でもかんでも母親のみが背負(しょ)い込む必要はないのだと言いながら、ヨシヨシと頭を撫でてくださる奏芽(かなめ)さんの大きな手がすごく心地いい。  奏芽さんの手に触れられるたび、今日1日拓斗(タクト)があまり眠ってくれなくて、疲れ気味だった身体が癒されていくようで。  拓斗(タクト)の親は凜子1人じゃないのだからと奏芽さんから噛んで含めるように(さと)されて、私は自分がどれだけ「母親なんだから」という思いに囚われてアレコレ気負いすぎていたのかを思い知った。 「奏芽さん。お疲れのところ申し訳ないのですが……拓斗(タクト)のお風呂、お願いしたいです」  ギュッと奏芽さんにしがみつきながら彼を見上げたら、 「申し訳ないとか……なし、な? 凜子が拓斗(タクト)の面倒を見ないとって思うのと同じくらい、俺もそう思ってんだし」  親としての思いに差はないのだから、私だけが奏芽さんに対して引け目を感じる必要はないのだと、再度やんわりと(たしな)められる。 「――あ、風呂上がりのあれこれは凜子にやってもらえると助かるんだけど……頼めるか?」  そう問いかけられて、私はコクン、とうなずいた。
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