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「日中俺が仕事に行ってる間、凜子はずっと拓斗の面倒見てくれてんだろ? その分、俺も家にいる時くらいは父親らしいことしてぇし、風呂も俺が入れるんで問題ねぇだろ」
何でもかんでも母親のみが背負い込む必要はないのだと言いながら、ヨシヨシと頭を撫でてくださる奏芽さんの大きな手がすごく心地いい。
奏芽さんの手に触れられるたび、今日1日拓斗があまり眠ってくれなくて、疲れ気味だった身体が癒されていくようで。
拓斗の親は凜子1人じゃないのだからと奏芽さんから噛んで含めるように諭されて、私は自分がどれだけ「母親なんだから」という思いに囚われてアレコレ気負いすぎていたのかを思い知った。
「奏芽さん。お疲れのところ申し訳ないのですが……拓斗のお風呂、お願いしたいです」
ギュッと奏芽さんにしがみつきながら彼を見上げたら、
「申し訳ないとか……なし、な? 凜子が拓斗の面倒を見ないとって思うのと同じくらい、俺もそう思ってんだし」
親としての思いに差はないのだから、私だけが奏芽さんに対して引け目を感じる必要はないのだと、再度やんわりと嗜められる。
「――あ、風呂上がりのあれこれは凜子にやってもらえると助かるんだけど……頼めるか?」
そう問いかけられて、私はコクン、とうなずいた。
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