■ひとりで気負い過ぎんなよ(オマケ的短編)

5/6

1544人が本棚に入れています
本棚に追加
/615ページ
 奏芽(かなめ)さんはきっと、拓斗(タクト)の沐浴後のタオルドライや保湿、着替えに至るまで全て1人でそつなくこなせる人だと思う。  だけど、あえてそこを私にお願いしてくれるのが彼らしいなって思うのと同時に有難くて。  奏芽さんは私の性格を本当に熟知しておられる。  私、奏芽さんに拓斗(タクト)のお風呂の一切合切(いっさいがっさい)を任せっきりにして何もしなくてもいいって言われていたら、きっと()(たま)れなかったもの。  奏芽さんは本当に周りに対する気配りが出来る魅力的な人だ。  こんな素敵な人が私の夫だなんて、何て幸せなんだろう。  そう気づいた途端、大好きって気持ちが溢れて、胸がキュンと切なく疼いた。  考えてみれば、奏芽(かなめ)さんは拓斗(タクト)のお世話に関して何ひとつ嫌がったりする素振りを見せられたことすらなかった。  よく男の人は出来ないと聞く、うんちの時のおむつ替えでさえ、私に何かを言うわけでもなく当然のようにサラリと済ませてしまわれるし、何なら「拭くより洗った方が気持ちいいからな」って拓斗のお尻をお湯で綺麗に洗い流してくださったりもして。  その奏芽さんが、拓斗(タクト)の沐浴に協力してくださらないわけなかったのに。  どうして私、奏芽さんの帰宅を待たずにそれを済ませないといけないとか思ってしまったんだろう。  さっきまでの気負いすぎていた私は本当におバカさんだ。  奏芽さんに頼られて嬉しいと私が感じたように、きっと奏芽さんも。
/615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1544人が本棚に入れています
本棚に追加