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いつもならすぐそばに奏芽さんが座っていらして、ふたりであれこれお喋りしながら笑い合っている時間帯だ。
「静か……」
この部屋はこんなに耳がキンと痛くなってしまうくらい静寂に包まれていたかしら。
リビングからは遠く離れたキッチンに置かれた冷蔵庫のモーター音まで大きく響いてくるようで、私はキュッと身体を縮こめる。
四季ちゃんといる時には感じなかった「ぼっち感」が急速に足元から這い登ってきて、胸のあたりをギュッと掴んできた。
「奏芽さん……」
返事があることはないと分かっていても、寂しさに大好きな彼の名を呼ばずにはいられない。
無意識に胸元に手をやって、ダンシングストーンがあしらわれた、小さな三日月型のネックレスに触れる。
ピンクゴールドのプチっとしたそれには、〝BESIDE YOU(いつもあなたのそばに)〟という文言ととも〝with K〟という文字が刻まれている。
奏芽さんとペアになったネックレスだ。
「――お願い。早く帰ってきて……私を抱きしめて……」
ポツンとつぶやいたら、一層奏芽さんに会いたくて堪らなくなった。
奏芽さんと初体験を済ませて、あんなに怖かったひとりで過ごすことが、何とか日常生活を営むには問題ないレベルまで回復した私だったけれど。
それでもまだ、こんな風にひとりの夜は、ちょっぴり怖くて落ち着かないの。
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