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「凜子、こんなトコで居眠りしてっと風邪ひくぞ?」
夢の中。
私のすぐそばに立った奏芽さんがそう言って、私の頬を優しく撫でてくれる。
「奏芽、さ……」
無意識にそんな彼に手を伸ばしたら、フワリと身体を抱き上げられた。
「とりあえずベッド行こうな?」
その動きで、羽織っていたパーカーがストン……と身体から滑り落ちて。
でも、それが気にならないくらい温かいのは、奏芽さんがすぐそばにいてくださるからだろうな。
ふわふわとした浮遊感と、温かな体温。
布地越しでもしっかりと分かる厚い胸板。着痩せするけれど、力強くて逞しい二の腕。
私のものよりかなり大きな手は、ひとたびピアノに出会うと、白と黒の鍵盤の上を流れるように踊って、とっても綺麗な旋律を紡ぎ出すことも私、知ってる。
「奏芽さん、大好きですっ」
言って、ギュッとしがみつくように彼の首筋に回した腕に力を込めたら、すぐそばで大きく吐息を落とされた。
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