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「俺にとっちゃー凜子が家にひとりでいる方が大問題なんだよ」
奏芽さんのお仕事の邪魔をしてしまったんじゃないかと不安になる私をヨシヨシと撫でると、
「片山さんと一緒にいるならともかく、ひとりで帰宅してると知って、凜子を放置しておけるほど俺は図太くねぇんだよ」
と頬に口付けを落とされる。
「でもっ」
なおも言い募ろうとした私の唇に人差し指をあてがってその先を封じると、「俺が早く帰ってくるの、迷惑だったか? ひとりでいる方がよかったのか?」って聞いてくるとか、奏芽さん、ずるいです。
ふるふると首を振ったら、「じゃ、問題ねぇだろ」ってニヤリと笑うの。
もう、奏芽さん、どれだけ私に甘いんですかっ。
「俺の世界はさ、凜子中心に回ってっから」
いつもの柑橘系の香りに、ほんのりとお酒の香りを乗せた奏芽さんは、少し酔っていらっしゃるのかな?
普段より言動がほんのちょっぴり子供っぽく見えて。
「有難うございます」
私を最優先してくださって。
本当はダメなことだと分かっていても、今夜は……今夜だけは。
そんな可愛らしい奏芽さん相手に、ちょっとだけ優越感に浸っても構いませんか?
私が奏芽さんにとっての〝最優先事項〟なのだと。
END(2021/08/11)
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