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木陰のベンチに移動して腰かけると、お弁当を膝の上に乗せたまま、ぼんやりと手にしたヘアゴムを眺める。
もしかしてあの人、今朝はこれを返すために私を待ち伏せしたりしてたのかな。
そんなことを考えて、まさかね……って思う。
だったら通せんぼとかしないでさっさとこれだけ返してくれればよかっただけだし。
あ。奏芽さん自身はそんなに乗り気じゃなかったけど、奥さんに叱られちゃったから仕方なく来たとか?
他所の女のものなんてサッサと突き返してきなさい!みたいな?
ちょっと待って。馬鹿なの凜子。
そうだとしたら、普通ヘアゴムなんて否応なく捨てさせるでしょ。
それを理由に相手に会いに行ったりなんてされたら……私なら絶対許せない。
この間「あいつ」って言ったのはきっと奥さんのことで、だとしたら奏芽さんは物凄く奥さんのことを愛してるんだと思うの。
なのに何でそんな、大事な人を裏切るような真似が出来るの?
本当、あの人、何を考えているのかさっぱり分からない。
はぁーっともう一度溜め息をついたところで、ふっと自分の上に影がさしたのがわかった。
え、何……?
そう思って視線を上向けたら――。
「か、奏芽……さんっ!? 何で構内に!?」
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