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「……凜子、1人なのか?」
私の驚きなんてどこ吹く風といった調子でこちらの問いかけをスルーすると、奏芽さんが逆に質問を投げかけてきた。
見つめていたヘアゴムを握り締めてうなずきながら、まるでそこに俺がいるのは必然なんだから、そんなこと聞いてくる凜子の方がおかしいんだぞ、とでも言いたげな眼差しに、私の認識がおかしいの?と錯覚してしまいそうになる。
いや、でもっ、そんなことないからっ!
一瞬流されそうになった気持ちを、頭を振ってリセットすると、私は奏芽さんに再度問いかける。
「な、何で奏芽さんが学内にいるんですか?」
どう考えても奏芽さんはうちの学生ではないし、百歩譲って教授ということもないと思う。
だってうちにはお医者様を講師に招くような学部――医学部とか――はないし。
「何で?って……。薄紫の花が見える中庭で弁当食うって教えてくれたの凜子じゃん? 俺、凜子がここにいるから来たんだけど、それ以外になんか理由ある?」
って。いや、それ、答えになってません!
頭痛がしてきそう。
でも、何でだろう。
そんなに嫌じゃない。
「私が居るからって……部外者が勝手に入ってきちゃダメでしょう!」
言ったら、「いや、でもここの大学、食堂とか一般人でも出入り自由なんだぜ? 知らなかった?」って……。うそ、知らなかった!
「凜子、学食行かないって言ってたもんな。そんなこったろうと思ってたぜ」
ニヤリと笑って、手にした袋を持ち上げる。
「で、これ。その学食で買ってきたテイクアウトのハンバーガーセット」
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