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「でも……奏芽さんのお昼……」
困惑しながら言ったら、「俺は大丈夫だって。凜子と違って講義受けなきゃいけないわけじゃねぇし、また学食行けばいいだけだろ? 凜子は時間制限あんだからとりあえず食え」って言われて。
この人は冷たいんだか優しいんだか本当によく分からない。
でもこの感じ……。私、何となく知ってる。
「奏芽さん、弟さんか妹さん、いるでしょ?」
その思いは半ば確信に近い。
だって、のぶちゃんが私に小さい頃あれこれしてくれていたそれに似てる。
「なに、凜子、エスパーか何かなの?」
奏芽さんがクスクス笑って、私も今朝、貴方に同じことを思ったのよ、って思ってつられて笑ってしまった。
「この間の夜、見ただろ。ちっこい女の子」
私の手から学食の紙袋を取り上げると、中身を出して手渡してくれながら、奏芽さんが言う。
「……えっと、和音、ちゃん?」
ハンバーガーを受け取りながら言ったら「よく覚えてんじゃん。そう、和音」って言って。
「あれ、俺の妹の娘」
何でもないことのようにさらりと言った。
「えっ? ……妹さんのっ!?」
ハンバーガーを手にしたまま、驚きのあまり大声でそう叫んで奏芽さんを見つめたら「ちょっ、まさか凜子。和音のこと俺の娘とか思ってたわけじゃ!?」って慌てるの。
ごめんなさい、顔立ちも似てたし……絶対そうだと勝手に思ってました。
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