前言撤回

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 何これ、スプーンとかで「あーん」ってされるのに近いものを感じて、ものすごく照れくさいんですけど……!  しかも中身が分からないの結構ドキドキだよ? 思いながらも、思い切ってストローに吸い付くと、冷たくてほろ苦い味が舌の上に広がる。どうやらアイスのブラックコーヒーみたい。  それを奏芽(かなめ)さんがじっと見ているのを感じてすごくすごく恥ずかしくなった。 「あ、あのっ! みっ、見過ぎですっ」  照れ隠しに睨みつけてそう言ったら、「可愛いなぁと思って」ってさらりと言うのとか……本当やめてくださいっ。  不意打ちの「可愛い」に思わずむせてしまって、ケホケホと咳き込んだ私の背中を、奏芽(かなめ)さんがクスクス笑いながら優しく撫でてくれる。 「バカだなぁ、凜子(りんこ)。取ったりしねぇからゆっくり食えよ」  言われて、「そうじゃなくて!」って思ったけど、きっとこれ、分かってて言ってるんだって思って、何も言えなくなる。 「なぁ、前に俺、言ったじゃん?」  覚えてるかどうか分かんねぇけど……。そう付け足して奏芽さんが言う。 「凜子といるとといるみたいで安心するっちゅーか……嬉しくなるって」  言われて、そのせいでモヤモヤしたんだって思い出した。  でも、今なら奏芽さんの言う「あいつ」が誰を指しているのか分かる。  あれは彼女さんや想い人や、ましてや奥さんを指していたわけじゃなかったんだ。  そして、私は奏芽さんにとってその人みたいな存在ってことで――。  それはつまり、のぶちゃんの時と一緒ってことなんだよね。  そう思ったら、胸の奥がちくりと痛んで鼻の奥がツン、とした。
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