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「あいつってぇのは俺の2つ下の妹――音芽っちゅーんだけどさ、そいつのことだったんだけど……」
ああ、やっぱり。奏芽さん、さっき妹さんと重ねて私を見てたって言ってた、もん……ね。
そこまで言って背中を撫でていた手を止めると、奏芽さんが私の両肩に手を移して私の身体を起こさせると、じっと目を見つめてきて――。
え? ちょっ、何、何、何なの!?
恥ずかしくて思わず目をそらそうとしたら「こっち見ろよ凜子」って低められた声音で命令された。
何故か彼のその声には抗えないような気がして……。でも照れているのは悟られたくなくて、伏せ目がちになってしまう。
と、肩にかけられていた手が顎に移されて……上向けられた顔に、奏芽さんの顔がグッと迫った。
彼のその動きに、私は思わず目蓋を伏せて……まるで奏芽さんからの口づけをまっているみたいになってしまう。
のぶちゃんの時には戸惑いに身体がガチガチに固まってしまったけど、今は緊張で少し震えている程度。
私、奏芽さんに唇を奪われること、嫌じゃないって思ってる。というか……むしろ、待ってる?
その期待に応えるように、存外柔らかな感触が唇に優しく触れて、呆気ないくらいにすぐに離された。
でも……今の、紛れもなくキス、だよ、ね?
嬉しさとときめきに潤んだ瞳で奏芽さんを見つめたら、
「核心はねぇんだけど……」
奏芽さんが、すごく真剣な顔で私を見つめ返してきた。
「音芽相手にキスしたいとか……そんなん思ったことなかったから。俺、凜子のこと、あいつと重ねてるっていうの、間違ってたと思うわ。――だから……前に言ったのも含めて前言撤回、な?」
ニヤリと笑われて、私は心臓が口から飛び出してしまいそうに早鐘を打つ。
「なぁ、凜子。もう1度聞くぜ? 俺と……付き合ってみねぇ?」
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