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「え……？」
奏芽さんが何を言ったのか一瞬理解できなくて、思わず小さく声を落とす。
「今すぐ返事しろとは言わねぇよ。凜子にも色々あんだろ。整理しないといけないこと」
言って、「ほら、また食べるの止まってんぞ」とたしなめられる。
でも今、食べるどころじゃないって思わないところが奏芽さんらしいというか。
「あ、あの……本気なんですか？」
そもそも奏芽さんは私のこと、何にも知らないのに。
彼が知っている私の情報といったらセレストアでバイトをしている近くの大学の女子大生で名前が向井凜子ってことぐらい。
おさげで、馬鹿みたいに堅物で気が強くて可愛げがない。
そんな情報しかないはずの私を、どうしてそんな対象として見られるんだろう？
「馬鹿な質問するなぁ、凜子。前から聞いてみたかったんだけどさ、逆に凜子は俺のことどんな奴だと思ってんの？」
聞かれて、私も言葉に詰まる。
私が奏芽さんのことで知っていることは鳥飼奏芽というフルネーム。
それから近所の小児科のお医者さんで、幼なじみと結婚している妹さんがいて、姪っ子の名前は和音ちゃん。
見た目がチャラくて女性関係も乱れ気味？
基本意地悪でワガママで自分勝手だけど、ふとした時にとても優しくてドキッとさせられる。
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