出会いはカフェの中

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

出会いはカフェの中

 「あ、契約彼氏だ。」  梨々が僕を見て言った。焦がしキャラメル色の瞳を細めて笑う。外の大雨に濡れた黒髪が照明に光る。僕に構わず梨々は向かいの席に腰を下ろした。バイト先のファミレスから近い古風な喫茶店。時間潰しに恋人の親友に遭遇するとは思っていなかった。    店内で流れるジャズを口ずさみながら、梨々は雨に濡れた髪の毛を拭った。親友の音々と対照的な長い黒髪。それを見て僕は、彼女がアコースティックギターを弾く姿を思い浮かべていた。繊細な指に上質なカーテンのように垂れ下がる黒髪は美しい。密かに狙っている男も多いと聞いているが、彼女はずっとフリーである。  それを気にするどころか、僕と音々のことを契約カップルとからかう。その姿には軽蔑も、馬鹿にした風もない。  ただ、空気を読んで付き合う僕らのことを不思議がっているようだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!