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息をのむ間もなく轟音が響く。雨が窓を叩き、風が地面を揺らしていた。いつの間にか外は雷雨。
「これからバイト?」
「うん。」
ニヤリと梨々が笑う。無理じゃない?と含みのある笑顔に僕はキュッと胸が痛くなった。そんな悪そうな笑顔もできるんだ、知らなかった。
「休もうかな。」
「いいと思う。こんな天気じゃ誰もハンバーグランチ食べに来ないよ。」
「ココアを飲みに来る人はいるけどね。」
僕は梨々の手元に目を移す。白いマグカップにホットココア。喫茶店も僕ら二人以外の人間はいない。
「今日は貸し切りですよ。お客様。」
ふざけたように梨々が言った。
「じゃあ、シフォンケーキでも頼もうかな。」
「ホールで?」
今度は甘えたような潤んだ瞳。梨々の瞳は色んな色があるんだ、今知った。
「もちろん、ホールで。」
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