小さな異変

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小さな異変

 「ちょっとー起きてますか?紗々隊員、応答せよ!」  音々が僕に抱きつく。授業終わりの夕方。そろそろとバス停を目指す学生が多い中で、人目も憚らず。クスクスとこちらを見る人間も多いから、ちょっとやめてほしい。  と思い、ハッと気がつく。  前はこんなことは思わなかった。めんどくさいなと気だるくなることはあっても、嫌悪感を受け取ることはなかったはずなのに。  どうしてしまったのだろう。  思い当たるのは、雷雨の中の出来事。焦げ茶色の瞳。シフォンケーキを頬張る姿、物憂げに外を眺める姿、長い髪を人差し指でくるくる遊ぶ仕草。  最近この流れ。自分の中の異変を感じて、心当たりをくまなく探す。いつしか喫茶店でのひと時を思い出して、梨々の表情のひとつひとつが走馬灯みたいに流れていく。そうなればもう最初の違和感なんか忘れてしまっているんだ。
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