浮気者

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「ごめんっ…彩音(あやね)」 玄関で手を合わせる夫の拓海(たくみ)。 「…」 「もうしない!だから許して」 許してもらえる気満々の、拓海の顔。 眉を寄せ、口元はほんの少し笑っている。 突き出した彩音の腕。 浮気相手の口紅が重たい。 キラキラ、ブランド物の、口紅。 「…なんで……浮気するの…?」 拓海は困ったように笑った。 「あはは…男の哀しい本能だよ…」 「私に…飽きた…?」 「まさか」 拓海は素早く靴を脱いで、彩音のカラダに手を回した。 「嫌っ」 他の女を抱いた腕。 触れられるのは、ものすごい嫌悪感だった。 「彩音だけが、好きだよ」 強引に抱きしめられる。 身じろぎする彩音の抵抗は、次の言葉で簡単に弱くなる。 「彩音とが一番相性いい」 ーー… 潤む目の涙を散らす。 「…もう、ホントに、浮気しない?」 「ああ、約束する」 「…」 抱きしめられて棒立ちの彩音。 手のひらを握りしめ、キュッと下唇を噛む。 拓海はくすぐったそうに笑う。 「彩音、嫉妬してるの?…可愛いな…」 「んっ…」 慣れた、キス。 カラダをまさぐる拓海の大きな手。 ダ………メ………… 彩音の思考は拓海の手に、唇に、簡単に溶けていく。 「や…」 力なく拓海を押す彩音の腕。 触れた、濡れた唇がーーイヤなのに気持ちいい。 「ん…」 脳が溶けて…何もーー考えられなくなる。 彩音をこんなにしたのは拓海だ。 嘘、つき… フ、と微かに笑って拓海は彩音を抱き上げた。
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