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せっかく顔を洗ってスッキリしたはずなのに。
またモヤモヤした思いに逆戻り。
のろのろとリビングへ向かうと、ソファーの上に横たわる、黒い塊が見えた。
「!!」
夢じゃなかった。
で、彼は何故ここで寝ているのか…。
朝日が射し込んでいるのに、スヤスヤ気持ちよさそうに眠っている。
もし、仮に。
万が一。
この人が、吸血鬼…だとして。
太陽の光って、苦手なんじゃないのかな?
それにしても…。
光りの中で眠るその人は、昨日よりも魅力的に見えてしまった。
寝顔も整ってて格好良いなんて、ズルイ。
足音を消しながら、ゆっくり近付いていく。
目の前でも十分見られる美貌に、うっとりしていると。
──パチッ。
目を開いた彼と、視線があってしまった。
「あぁ…もう朝か。」
まだ少し眠そうな目を細めてフッと微笑みかけられると、思わず心臓が跳ねる。
ドキンドキン…。
イケメン耐性無いんだから、むやみに笑顔ふりまくのは勘弁してほしい。
慌てて、ササッと距離を取った。
「あの…あなたは……えっと…」
「ん?」
「……き、吸血鬼…なんですか?」
「そうだ。」
きっぱりと、言い切られて。
本当に存在したの?とか。
正体を知った私は、殺されるの?とか。
ぐるぐる考えていると、思わぬ言葉が飛び込んできた。
「昨夜はすまなかったな。」
「…え?」
「お前の血があまりにも美味すぎて…どうにも止められなかった。いつもあんなに夢中になることはないんだが……すまない。」
「…はぁ。」
血が美味しくて、良かったってのも変だけど。
不味くなかったなら良かったかな。なんて思った私も相当おかしい気がする。
というかこの人、何かあんまり怖くないな…。
吸血鬼だけど。
そもそも、吸血鬼ってよく知らないし。
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