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ある日。
カインの服を買いにいこうって、話になって。
家に居るときは、Tシャツとかラフな格好でいればいいのに。
いつも、黒のシャツに、黒のネクタイ、黒のベルトに、黒のパンツ。
マントは流石に着けてないけれど、もー真っっ黒。
というわけで、二人でショッピングに出掛けたのです。
──ガタンゴトン。
電車に揺られ、目指すは2駅先の大きなショッピングモール。
カインは電車に乗るの、久しぶりらしくて。
外の景色を見ながら、ニコニコしてる。
そんな様子に私も微笑みかけた時。
近くの女の子達が、コソコソと内緒話をしてるのが聞こえてきた。
チラチラ、カインのほうを見ては。
「足長いー」
「モデルかなぁ?」
「格好イイー!」
頬を赤く染めて、キャッキャしてる。
…忘れてた。
カインが、イケメンだってこと。
1ヶ月以上毎日見ているせいか、親戚のお兄さんみたいな感覚だったけど。
超絶イケメンだったんだった。
「あのー…」
キャッキャしてた2人が、カインにおずおずと声をかけてきた。
「どこ、行かれるんですか?」
「ん?服を買いに行く所だ。」
「えぇー、そうなんですか。何着ても似合いそうー!」
声を弾ませて、カインを褒めてる女の子達。
明らかに気がある素振りに。
─ムッ。
何故か、胸がムカムカする。
別にカインは、私の彼氏とかじゃないのに。
ただ、私の血がほしくて傍に居るだけの人なのに。
………。
そうだよ。
私の血が美味しくなかったら、カインはきっと傍に居なかった。
お帰りって、迎えてくれることも。
学校であった話を聞いて、相槌を打ってくれたりも。
優しく抱き締めて、頭を撫でてくれることも。
全部無かったかも……知れないんだ……。
そう思うと。
凄く寂しくて。
悲しくて。
ムカムカしてた気持ちは、一気に消えて。
今度は泣きそうになる。
……なんだろ。
情緒不安定なのかな。
ダメダメ!
暗いのは、性に合わないぞ。
よし!
今日はカインに合うとびっきりの服、いーっぱい探すんだ!
気合いを入れて、カインを見る。
まだ女の子達に囲まれてたけど、ふと目が合うと。
ニコッと、笑ってくれる。
それを見た女の子達から、鋭い視線が向けられた。
「何なのあんた?」と2人の態度が物語ってる。
こ、怖いよー!
吸血鬼なんかより、よっぽど怖い。
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