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その夜。
お風呂上がりにお茶を飲もうとリビングに入ると、カインがTVを見ていた。
え、珍しい…恋愛ドラマ見てる……。
TVの中では、男性の役者さんが女優さんを熱心に口説いている所だった。
ぶつぶつ何か言いながら真剣に見ているカインの横顔が珍しくて、つい不躾に眺めていると、気配に気付いたカインがおいでと手招きで私を呼ぶ。
お茶を片手に、カインの隣に腰をおろした。
「…面白い?」
「あぁ。今、勉強中だ。」
「勉強?なんの?」
そう聞くと、今まで見たことがない、眩しいものを見てるみたいな目をしたカインは。
TVを見つめたまま、ゆっくりと口を開く。
「…愛の告白。」
──ガンッ!と鈍器で頭を殴られたみたいな衝撃が走った。
え?
愛の告白…?
…カインには好きな人がいたの?
その視線の先は…誰に向かっているの?
照れ隠しのように頬杖をついたカインは、今その人のことを考えているんだ…。
相手が私で無いことは分かりきっている。
その事実が、私の心に重くのしかかった。
ギュッとコップを持つ手に力を入れながら、動揺が悟られないように。
いつも通りの声に聞こえるように、努力をした。
「勉強中なら、お邪魔しちゃったかな。私、そろそろ…」
寝るね。そういって立ち上がろうとした私の手を優しく掴んで、カインは引き止めてきた。
「…ひなこは邪魔じゃない。傍に居てくれ。」
え、何で?
心に想う人がいるのに……何でそんな風に言うの。
ムッとした私は、尖った態度をとってしまう。
「早速私で練習?」
「…練習?…それも悪くないかも知れないな。」
「え?冗談じゃな…」
ぐっと肩を抱き寄せられ、逞しいカインの胸に抱かれるようにもたれさせられ言葉が途切れてしまう。
「…ひなこ……」
ドキッと勝手に反応する、私の心臓。
やめて。
ドキドキしないで。
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