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私の声が聞こえたみたいだけど、その人は顔を上げるのもツラそうで。
ゆっくり目だけがこっちを見た。
……え?
目が赤く光ってるみたい……。
いや、まさか、そんな。
カラコンか何かだよね?
口を開けて、何かボソボソ喋ってるみたいだけど、声が小さくて全然聞こえない。
どうしようか迷ったのは一瞬で。
危なくなったら、逃げればいい!
そう思って、そろりと苦し気な声を上げる塊へと近付いていく。
「あの……救急車呼びますか?」
「……った。」
「え?」
「腹……へった………」
「……は?」
え?
ぐったりしてるのって、それで?
何なの、人騒がせな……。
苦しそうだなとか、もっと酷くなったらどうしようとか。
そんなこと考えてたのがバカみたい。
お腹すいてただけ、なんて。
思わず脱力して、つい笑っちゃった。
「食べるだけなら、うちに来ますか?」
「………う。」
「公園抜けたらすぐそこなんで、そこまで歩けます?」
「………。」
こくんと力なく頷いたその人は、ゆっくり気力を振り絞るようにして立ち上がった。
で、気がついたんだけど。
身長は185㎝くらいありそうなスラッとした体躯に、黒い艶やかな髪の毛、スッと通った鼻筋。
憂いを帯びた切れ長の目がカッコイイ。
モデルって言われても納得してしまうその人は、同級生とは比べ物にならない色気があって。
…どうしよう。
何か、ドキドキしてきた。
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