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基本的に部活ごとに二、三年生がひとりずつ。そこに一年生が三人加わり合計五人のチームになる。
学年の割り振りは各部活の所属人数によって異なる場合があるが、五人ひと組は変わらない。
入部希望者が多いところも少ないところもあるという問題もあったが、上手いこと五人におさまった。
五人という人数は、部活立ち上げ条件が最低五人なのを利用した。
現在ラジオ体操部が最少五人。主に体育祭で活躍しているラジオ体操部はみんなの前でお手本の体操を見せる。まあ、今年度の入部希望者はいなかったようだけれど。
一年生には事前に入部希望の部活名が書かれた箱から籤を引いてもらっていて、入部希望先の部員と同じになるようチーム分けされていた。
入部希望者が少ない、またはいない場合は、残念だが二、三年生だけのチームとなる。
チーム分けの説明のとき「帰宅部や希望部活を決められなかったひとは、すみません、人数合わせとして使わせてもらっています」と言った直輝に笑いが起きていた。
「早く見つけるためには聞き込みをして目撃情報を得ることをお勧めするけど、ま、そこは自由だ。聞き込みに関してもチーム一丸となってするか、個々人で情報を集め持ち寄るか、など方法はさまざま。チームで相談して決めてくれな」
直輝の言葉に大半の生徒が頷いた。
それを見て直輝は安心したように説明を続ける。
「で、やっと見つけた依頼者の依頼内容、それがたとえば『◯年生の◯◯くんの机にこのラブレターを入れてほしい』だとしたら、君たちが◯◯くんのクラスや机を探して、◯◯くんの机にラブレターを入れた時点で依頼達成、というわけ」
簡単に言えば。
一、依頼者を見つける。
二、依頼者から依頼内容を受け取る。
三、依頼内容を達成する。
以上が探偵ゲームのルールだ。
まあ、探偵というよりもはや何でも屋に近いのかもしれないけれど。
「あ、あと依頼達成の証となる封筒が必ずあるから、忘れずに持ち帰ること。それがないと報酬はもらえないから気をつけて」
たとえばさっきの例で◯◯くんの机にラブレターを入れた場合、代わりに依頼達成の封筒が入っている。
それを係のものに持っていけば報酬をもらえる、というわけだ。
聞き込みをされたほうは、たとえそれらしい人を知っていたとしても、聞かれたことに素直に答えるか答えないかは自由。
こうしたちょっとした心理戦も楽しめるルールになっている。
報酬は、食堂幻の特別メニュー無料券・食堂無料券(特別メニューを除く)・ランキング上位者との握手とツーショット撮影券。以上みっつからひとつを選んでもらう形になった。
報酬はチーム全員がもらえるが、選択権はチームごとにひとつ。あらかじめチーム内でどの報酬にするかを決めておいたほうがいいだろう。
「依頼達成は単独でできるけど、封筒提出時にチーム全員が揃ってないと無効だからな。もちろん、たとえ依頼を達成したとしても、脱落したチームには報酬獲得権はない」
各自ルールの確認を行っていた生徒たちは直輝の言葉に「脱落?」と首をかしげる。
再び騒めきが戻ってきたところで、砕けた口調で説明していた直輝が畏まったように背を正した。
自然と生徒たちの視線が直輝に向かう。
「最後に。重要なお知らせです」
しん、と静まり返る講堂。
生徒たちは真面目な顔をした直輝が口を開くのを真剣な表情で待っている。
「ただ今、学園内でウィンク泥棒の目撃情報が確認されました」
と、直輝が言ったとき、背後のスクリーンに画像が映し出される。
途端、歓声。「きゃあ」やら「わあ」やら「うおー」やら。生徒たちは大興奮だ。
それもそのはず。
スクーリーンには生徒会の弦音、凌牙、嘉。風紀委員会の千夏、愛斗、そして流を含むその他ランキング入りの生徒数名がウィンクをした写真が映し出されていたのだから。
直輝は興奮の収まらない生徒たちに負けじと声を大きくしてマイクに向けた。
「ウィンク泥棒は尻尾を奪います。奪われたものはすぐさま脱落ではなく、チームの手助けができます。しかし、チーム全員が尻尾を奪われた時点で脱落。報酬を得る権利を失いますのでご注意ください」
ここで尻尾の登場だ。
昨年まで行われていた『尻尾取りゲーム』で使用していた、腰につけるふわふわした長い尻尾。平たく言えば使い回しだった。
それぞれ腰につけた尻尾を見せ合う生徒たち。
そしてひとりの男が舞台袖から出てきて、こそこそと直輝になにかを耳打ちした。
それに頷いた直輝が深刻な顔をして生徒を見渡す。
「最新の情報をお伝えします。ウィンク泥棒は現在ここ第一講堂に潜伏しており、ゲーム開始十五分後に学園内に移動開始するとのことです。尻尾を奪われたくないものは第一講堂から離れることをお勧めします。各自立入禁止エリアを再度ご確認ください」
尻尾取りゲームを応用し練り直した探偵ゲーム。
依頼者を探し、受け取った依頼内容を達成する。その前にウィンク泥棒に捕まり、チーム全員が尻尾を奪われたら失格。
つまりスクリーンに映し出されたランキング上位者たちが鬼役だった。
サプライズに歓声をあげていた生徒たちが落ち着いてきたころ、直輝が司令官のような厳しい顔で告げる。
「それでは探偵諸君、廊下は走らず、物は壊さず、人に危害を加えず、人を脅さず、風紀委員に逆らわず、ルールを守って依頼を達成してください。それでは──……」
大きく息を吸い込んで。
「ゲームスタート!」
さあ、探偵ゲームの始まりだ。
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