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この狙撃は、俺を狙っていると思わせて、この卒業式の会場から、俺を離そうとしている。狙撃は、相当な腕前であるのに、殺意が全く感じられなかった。プロの仕業だとしても、ここまで殺意を感じないのも珍しい。
「これは、相当、離れた場所から撃っている」
殺意も感情も、読み取れないほどの、はるか遠方からここを狙っている。更に、離れた場所なのに、この精度とすると、わざと外したという事は頷ける。
園児は、感謝を記した手紙を読み始め、読み終わると、小さな花束と一緒に親に渡していた。これを人数分行うとすると、暫くかかる。
俺は、そっと廊下に出ると、男の顔をまじまじと見た。だが、全く見覚えがない。
「君は、誰だ?」
「私ですか?本村警視正の部下で、小御門です。でも、本村警視正も、俺の事は、ご存じないかな……本日、早朝にこの国に到着しましたからね」
壬生に小御門の素性を調べさせると、FBIに派遣されていた警察官であった。
「ここ桐圓学園には天才児童が多く存在します」
「でも、この幼稚園には、そんなに凄い天才はいなかったぞ」
内薗は小学生で、他の天才児童も数人いるが、全て小学生であった。
だが、今日はいつもと違っていて、園児の家族がきている。田丸の家など、長男の卒園式を見ようと、一族全員が来ていた。特に、まだ一歳にならない田丸の弟は、先程からハイハイで椅子の隙間を暴走していた。
「そうか、家族……弟妹に天才がいるのか……」
他の幼児を確認してみると、持田と飯沼の弟妹がきていた。
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