第一章 君無くして春は来ず

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「俺は避ける事が可能だが、眠っている眞次郎は銃弾を避けられない」  事故死と見せかけて殺そうとした事は、調査される事を避けたいという思惑も感じる。 「本村、持田の家族を保護」 「やっている」  持田の母親に耳打ちし、具会いが悪くなったので別室で休むという設定を装い、目立たずに退出させた。 「チビ1、眞次郎が最近行った場所を教えて」 「ラジャー!」  眞次郎は桐圓学園の保育園に通っていて、ほぼ家と保育園との往復になっていた。しかし、言語以外の能力も育てようと、ピアノ教室にも通っていた。 「週に二回、ピアノの先生が持田の家に来てレッスン、その他にもう一か所に通っている」  特殊なレッスンのようで、毎回、母親が車で一時間程走り送っていた。 「この狙撃手は移動しながら撃っている。だが、桐圓学園は山の上に近い。同じ高さ、もしくは、ここよりも高い位置となると、別の山しかないな……」  窓の外には、霞んだ山が見えていて、ここから二十キロメートル近く離れていた。そこから狙撃するのは無理と思いつつも、俺ならばできる。  俺は窓を開けると外に出て、屋根に上ると、山を見た。
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