第一章 君無くして春は来ず

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「それで、夏目、姉さんがここに来ると言って怒っているので、卒園式に戻ってくれるかな……」 「……分かった」  ここで、卒園式なのかと文句を言いたくなるが、本村の姉の純花が怖い。 「それと、小御門君だね。今日から配属になったのでしょう?どうして、ここにいるの?」 「夏目室長に会いたかったのですよ。俺が、この国に戻って来た理由は、夏目室長に会って話したかったからです」  それは事前に本村に話がいっていて、承知している事だったらしい。 「目の前に夏目がいるだろう。用件は済んだのか?」 「これからですよ。でも、面白い人物ですね……誰よりも犯罪者に近いので、思考を先回りして読んでいる」  犯罪者に近いというのは、間違いではない。俺は、地下社会という、犯罪社会の中にいた。 「それで、小御門君。何が起こったのか、分かっているのでしょう。説明してくれるかな?」  俺は小御門から話しを聞きたかったのだが、園長先生が俺の名前を呼んでいて、探している事が分かった。 「夏目、手紙を読む番ではないの?」 「そうかもしれない」  そう言えば、感謝の手紙というのを書いておけと、園長先生に言われていたかもしれない。 「隠れて、屋根から降りよう……」  屋根にいる所を、園長先生に見つかったら、尻叩きにあってしまいそうだ。
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