第二章 君無くして春は来ず 二

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第二章 君無くして春は来ず 二

 保護者の懇親会のようなものがあったのだが、本村は丁寧に断ると、警察署に向かっていた。 「夏目の手紙は正直過ぎて、採点すると二十点だな。でも、親になったみたいで嬉しかった」 「採点が厳しい……」  本村の運転する車には、後部座席に小御門が座っていた。小御門は、無表情に前を見ていて、俺と本村の会話を聞いていた。 「眞次郎は、何故、殺されそうになった?」  チビ1が調べてくれた、眞次郎の行動を読んでいると、チビ2が白蛇の姿で、小御門に牙を剥いていた。しかし、小御門の視界にチビ2は入っていない。無視されたチビ2は、とぼとぼと戻ってきて、俺の首から服の隙間に入っていった。 「夏目室長、ベルトが外れて首に巻きついていますよ」 「これは、ベルトではない!」  しかも、首に巻いていない。 「このピアノのレッスン、これが原因だろうけど……もしかして眞次郎、流れていた暗号文を読んだ?」 「近いですね。通っていたのはピアニストの家で、レッスンの様子を見せ、曲を聴かせていたようです。その先生には問題がないのですが……」  ピアノレッスンに通う途中で、母親は必ず休憩をしていた。それは港に近いサービスエリアで、眞次郎はそこで出会う人々の会話を聞いていた。
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