第二章 君無くして春は来ず 二

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 定食屋では、よく早朝に、腹が減ったと入ってくる、堅気ではない雰囲気ではない人物がいると噂になっていた。  様々な人が、異なる時間に、様々な事を言っていたが、眞次郎には一つの世界になっていた。 「最後の人は、多分、刑事だな?」 「そうだろう。地元警察に問い合わせしている」  眞次郎は船乗りが母国語で喋っている言葉を理解し、その荷物が税関を通った貨物ではなく、乗務員の私物として処理されていると知った。 「眞次郎は、犯罪というものを理解していないけれど、どの言葉でも理解しようとし、かつ、全てを一つの世界にしようとしていた」  眞次郎は、覚えたてのパソコンで、荷物が何なのか突き止めてゆき、それは余りに無防備だったので、相手に察知されてしまった。そこに、桐圓の職員が現れたので、追跡されていると勘違いして拉致されてしまったのだろう。 「職員が行方不明になって、やっと警察も事件性を認めたのか……」 「嫌味を言うな、夏目……」  だが、警察に到着してみて分かったのだが、これは本村の事件ではなく、更に小御門の担当する事件でも無かった。 「眞次郎の件は、地元警察が管轄なのか……」 「この事件は、たまたま遭遇したものです。夏目室長の周辺には、事件が転がっていますよね……」
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