第一章 君無くして春は来ず

7/15

186人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
 既に並んでいたので、最後尾に行くと、そのまま並んで入場してみた。すると、席に座る前に、保護者の一人が寄ってきて俺を抱えた。 「お兄ちゃん、お姉ちゃんの真似をしたいのかな。ボクはこっちで、見ていようね」 「いや、俺も卒園するのです!」  どうも、園児の弟が混じったのだと、勘違いされてしまったらしい。園長先生も慌ててやって来ると、保護者の男性に頭を下げていた。 「この子も、卒園なのです」  園長先生は、俺を椅子に座らせると、再び慌てて檀上に戻っていた。  椅子に座って園長先生と、担任の話を聞いていると、次第に眠くなってきて、気が付くと爆睡していた。 「夏目君!卒園証書を取りに来てね」 「はい!」  名前を呼ばれて慌てて飛び起きると、椅子から落ちてしまった。すると、シュッツと言う音と共に、椅子が倒れて吹っ飛んだ。周囲は俺が寝ぼけて椅子から落ち、かつ椅子を倒したと爆笑しているが、そうではない。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加