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兄貴が最近、楽しそうに学校に行っていることに気づいて、俺は、どうしようもない焦りを感じた。
兄貴の携帯を盗み見て、その画像フォルダに保存してあった先輩との写真を見ると、それは益々強くなった。
その最初の衝動の理由は、俺にもよくわからない。
ただ、兄貴を幸せにしてはいけない、そう思って、俺はその衝動のままに動いた。
兄貴も先輩も傷つけてやろうと思って始めた嘘だったのに、いつの間にか、幸せな家族だなんて、誰も得をしない真っ赤な嘘に変わっていった理由も、わからない。
あんなの…聞いていた兄貴だけじゃなく、言ってる俺だって虚しかった。
でも、そうして嘘を付いているうちに、その話をしている間は、本当にそんな幸せな家庭で育ってきたように感じて…先輩の前だけなら、そんな普通の人間になれるような気がして…それが恋という気持ちに変わったのは、一体いつからだったのか……。
俺には、兄貴がいつも笑ってる理由も、先輩が俺を見てくれない理由もわからない。
でも、俺が一番わからないのは、俺自身のことだった。
何がしたくて、何を求めて…何でこんなに苦しいのか、何一つわからない。
「赤川には、わかる…?」
いつも、何もかも知ってるみたいな顔してるじゃん。
だったらわかるの?
「俺…何がしたかったの……?
何でこんな苦しいの…。
何をすれば楽になるの?
何で……」
病室のドアの隙間から兄貴の憔悴しきった姿が見えた時、俺の心を過ぎったのは、確かに後悔だった。
あの時赤川が言った通り、俺は自分のしたことに、今更後悔している。
その理由は、やっぱりよくわからないけど。
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