68人が本棚に入れています
本棚に追加
24 Nozomu.side
「俺は、未だにまだわかんねぇよ。
自分が、何をしたいのか。
でも、親父が教えてくれた。
まだ迷っててもいいって。
誰かのためじゃなく、自分のための夢が見つかるまで…俺は、何にも考えずに自由に生きる。
俺たちは、大人から見たら…まだまだ子どもなんだろ、きっと」
そう言って笑う赤川は、俺には、とても大人に見えた。
ただ好き勝手に生きているだけだと思っていた赤川の自由には、俺なんかには想像も出来ないくらいの、大きな覚悟があったんだろう。
「お前だってそうなんだよ。
まだ16だろ。全然子どもなんだよ。
お前だって、俺みたいに好き勝手に生きられるはずだろ」
「…そんなこと、出来るわけ「出来るんだよ」
「…え…?」
赤川は俺の言葉を遮った。
何もかも見透かしているような目が、俺を真っ直ぐに見つめる。
「出来るのに、お前はしてこなかった。
自由に生きたいって言いながら、お前は結局、強制される楽な未来の方を選んだ」
強制される、楽な未来…。
確かに、そうだったのかもしれない。
俺が父さんに逆らわずにこの道を選んだのは…逆らって自由を手に入れる道の方が険しいと思ったからだ。
結局自分でこの道を選んだくせに、いや、自分で選んだからこそ、俺は…兄貴への罪悪感に、耐えられなかった。
兄貴が、俺を責めないから…誰も、責めなかったから…兄貴が俺に笑いかけるたびに、自分の醜さを思い知らされるようで、苦しかった。
だから…兄貴の幸せを壊して、兄貴に、俺を恨んでほしかった。
恨んで、憎んで、責めてほしかった。
その方が…きっと、楽になれたんだ。
一番最悪な形…俺は、醜い。
小さくて、情けない…弱い人間なんだ。
「でも、お前は、まだやり直せる」
「…もう無理だよ。父さんも母さんも兄貴も、皆俺が滅茶苦茶にしたんだ。今更…」
今更、元に戻すなんて出来ない。
元に戻すだけじゃない。
ここから…良い方向に引っ張っていくなんて、そんなこと…俺にそんな力はない。
「…兄貴となら、やり直せる。
お前の兄貴は、まだ生きてんだろ」
その言葉は、赤川の口から語られるからこそ、とても重い意味を持った。
兄貴とやり直す。
そんなことが、今更俺に許されるのかはわからない。
そんなことが、今の俺に出来るのかも。
でも、あの時抱いた後悔も、やり直したいと思う今の気持ちも、嘘じゃない。
今の俺に断言出来ることは、それだけだ。
「…赤川」
ありがとう。
そして、ごめん。
「…そばで、見ててほしい。
お前が見てるなら、出来る気がする」
もう少しだけ、弱い俺の背中を押してほしい。
赤川は、また優しい目をして、笑ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!