68人が本棚に入れています
本棚に追加
28 Amane.side
幸くんに連れられて病室に戻ると、扉の前に制服を着崩した男の子が片手に花束を持って立っていた。
知らない子だけど、その制服は見慣れたものだ。
「あ……」
僕たちに気づいて会釈をしたその子は、手に持っていた花束を僕に差し出した。
「あの、これ…」
綺麗な、可愛い花束だった。
「新田から、預かってきました」
「え…?」
この子は、希のクラスメイトだろうか?
希が僕に花束なんて…どうして…?
「あいつが、直接謝りに来ないと意味がないってことはわかってます。
でも、あいつ…あなたを階段から突き落としたのは自分だってクラスの奴らに話したんです。
家のことも…医者にはなりたくないって、父親に話してみるそうです。
こんなことで、許されるようなことじゃないかもしれないけど…でも…今は……これが、あいつに出来る精一杯なんだと思います。
許してやってくれとは言いません。
ただ、もう少しだけ…待ってやってくれませんか。
…お願いします」
その子は、深々と頭を下げた。
その姿からは、希に対する深い想いが見て取れる。
希には、こんなに素敵な友達がいたんだね。
「お花、ありがとうって、希に伝えてくれる?」
最初から僕は希を恨んだりなんかしていないけど、希の気持ちは、ちゃんと受け取ったから。
「希が会いにきてくれるのを…ちゃんと、兄弟として会える日を……ずっと待ってるって、そう…伝えて。
今日は、ありがとう。希を、よろしくね」
「…はい」
いつか、皆で笑い合える日が来るんだろうか。
そんな幸せな日々が、いつか訪れるんだろうか。
今までは、夢物語だったそんな未来が、今は…少し近くに感じる。
皆で手を叩いて幸せを分かち合える日は、きっと、もうすぐそこにある。
神様…今は、そう信じていてもいいですか?
最初のコメントを投稿しよう!