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「天音くん、ここってさぁどうすんの?」
彼は勉強でわからないことがあると、何故か僕に聞く。
僕より頭のいい人はいくらでもいるのに。
「天音くん、それ持ったげるよ」
彼は、僕が重い荷物を持っていると、必ず手伝ってくれる。
「天音くん」
天音くん。
あまねくん。
彼は、僕を名前で呼んでくれる唯一の人だ。
「天音くん、今日お昼…「山下くん!今日はあたしと食べる約束してたでしょ?」
「え?」
最近、僕をお昼に誘ってくれる山下くんを連れ去って行く女の子がいる。
「あ、天音くん!明日!絶対ね」
彼女に連れ去られながら山下くんはいつもそう言ってくれるけど、その約束が果たされたことはない。
そもそも、絶対毎日山下くんは僕とお昼を食べなきゃいけないわけじゃない。
そんな約束を、したことはない。
僕は一人でも平気だ。
今までずっとそうだったから。
どうして山下くんが僕に構うのかよくわからないけど、多分、ただの好奇心だろう。
物珍しさ、怖いもの見たさ?
そんなようなものだろう、きっと。
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