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あれから、クラスでのいじめはなくなって、相変わらず話し掛けてくれる人は山下くんだけだけど、僕たちは休みの日もメッセージアプリでやり取りをするようになって、一応、“友達”と呼べるくらいの関係にはなった。
そして、今日は、待ちに待った動物園に行く日。
昨日、またお父さんとお母さんが言い合いをして、体中が痛むけど、多分大丈夫だろう。
もうすぐ、山下くんが迎えに来てくれる。
「あ…」
“家の前についたよ!”
山下くんからメッセージが送られてきた。
“ありがとう。すぐに出るね”
すぐに返事を送り返して、泣き疲れて眠るお母さんを起こさないように、そっと家を出た。
「天音くん!」
制服じゃない山下くんを見るのは初めてだった。
とてもオシャレで、いつもとは少し、雰囲気が違う。
僕なんかが隣に並んだら、とても変に見えるんだろうな。
「ありがとう。ごめんね」
「あれ?何か、体調悪い?」
「え?」
「足、ちょっと引きずってる」
「あ……昨日、転んじゃって。大丈夫。歩き難いだけで、そんなに痛くないから」
「本当に?」
「うん。平気」
山下くんはなかなか鋭い。
悟られないようにしなきゃ…。
人が沢山いるところに行けば、あちこちから視線を感じる。
普段は、気になって息が詰まるけど、今日は、山下くんが隣にいてくれるから、あまり気にならなかった。
寧ろ、その視線を山下くんがどう思うかということの方が気になって、僕は、山下くんの横顔ばかり見つめて歩いた。
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